■ B型肝炎ウイルスの母子感染を防止するために | 更新日: 2009/7/1(水) |
1.B型肝炎ウイルスの母子感染とは B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBVといいます)によっておきるもので、主に血液によって感染します。我が国では100人に1〜2人の割合で、からだの中にB型肝炎ウイルスを持っている人(HBVキャリアといいます)がいます。女性でHBVキャリアである場合、妊娠中や出産時にその女性の血液が赤ちゃんにふれることで、赤ちゃんにB型肝炎ウイルスが感染することがあります。これを母子感染といいます。すると、免疫機能が未熟な赤ちゃんは母親と同様にHBVキャリアとなり、将来慢性肝炎や肝硬変、肝がんになるおそれがあります。また、B型肝炎ウイルスの少ないHBVキャリア女性から生まれた場合は、出生後に赤ちゃんが急性肝炎にかかることがあります。 このため、赤ちゃんが生まれたら、ただちにB型肝炎ウイルスの感染を防止するための治療を開始していくことが大切です。
2.B型肝炎ウイルスの母子感染を防止するために ⑴母子感染の防止方法 B型肝炎ウイルスの母子感染を防止するためには、HBVキャリアの母親から出生した赤ちゃんに対して、B型肝炎に対する抗体(免疫)をたくさん含んだグロブリン(HBIGといいます)や、B型肝炎ワクチンを投与することが必要です。 ⑵キャリアである母親自身の検査について B型肝炎ウイルスが赤ちゃんに感染しやすい程度を調べるための検査、すなわちHBe抗原検査を必ず受けましょう。母親がHBe抗原陽性のとき、赤ちゃんへのB型肝炎ウイルスの感染率は100%で、このうちの85〜90%はHBVキャリアとなります。母親がHBe抗原陰性のときは、赤ちゃんへの感染率は10%程度で、キャリア化することはまずありませんが、急性肝炎や劇症肝炎をおこすことがあります。
3.キャリアである母親自身の健康のために 母親がB型肝炎ウイルスを持っているHBVキャリアである場合、肝炎の症状や肝機能異常が続かないかぎり、健康者と同様に過ごすことができます。しかし、健康状態の確認のために、定期的な健康診断や検査を受けることをお勧めします。
4.B型肝炎ワクチンの効果と副反応 B型肝炎ワクチンの投与により、ほとんどの赤ちゃんが感染を防止することができます。すなわち、母親がHBe抗原陽性であっても、適切な母子感染防止の治療を受ければ、赤ちゃんの95〜97%はキャリア化を防ぐことができます。しかし、数%の率で出生時に既に子宮内で感染している例があり、このような例では残念ながら防止のための治療の効果はありません。 B型肝炎ワクチンによる副反応は、大人では局所の発赤や軽度の発熱が数%にみられることがありますが、小児ではこれらの副反応はまれにしかみられません。
5.B型肝炎ワクチン接種後の経過観察について 一部の赤ちゃんでは、ワクチンによる免疫がつきにくい例や、一度ついた免疫が段々と低下する例があります。この場合は、必要に応じてワクチンの追加投与を行います。すなわち、ワクチン接種が終了しても、継続して免疫が上がっているかどうか、またB型肝炎ウイルスの感染を起こしていないかどうか、定期的に確認する必要があります。観察期間は少なくとも3歳まで、半年〜1年毎のチェックで良いと考えます。
6.母乳について 母親がHBVキャリアであっても、赤ちゃんへの感染防止が適切に行われている限り、授乳制限は必要ありません。ただし、母親の乳首に明らかな傷があったりして出血している場合には、感染を防御できる量を上回るB型肝炎ウイルスが口腔の粘膜を介して赤ちゃんの血液中に入り、感染するおそれがありますので、傷などが治るまでの間授乳は控えて下さい。
7.他の予防接種について 生後3カ月から、BCG、ポリオ、DPT(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)が受けられます。B型肝炎ワクチンの接種とともに、いつ頃、どの予防接種を受けていくか予定を立てていきましょう。
|
|
|
|